(申し訳ないけど、とても住めそうにない……)
ほとんどが木造二階建てで、築年数はどれも五十年を軽く超えていた。お世辞にも綺麗とは言い難く、セキュリティなんて言葉は存在しない。建物の老朽化や設備の古さに目を瞑り、防音性の低さや耐震性の不安に耳を塞ぎ、害虫などへの嫌悪感を無視できるのならばいいだろうが、野々花には耐えられそうにない。
とはいえ、あまり贅沢を言える身分ではないのは重々承知している。金銭的に余裕がないのなら、なにかを諦めなくてはならないのだ。
「通勤は大変になるけど、もっと都心から離れた場所で探すべきかなぁ………」
新居を選ぶのなら最低限の防犯性と清潔さは確保したい。ほとんど外食はせずに自炊しているため、スーパーが遠いのも困る。
そうなると妥協できる点といえば、会社までの距離だろう。今住んでいるところよりも東側ならば、同じ物件条件でも多少家賃は抑えられるはずだ。
(新しい家探し、火事の見分への立ち会い、マンションの管理会社や保険会社との補償のやり取り。やるべきことが多すぎて頭がパンクしそう)
野々花は文字通り頭を抱えた。



