本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


野々花がそう言うと、一哉は顎に手を当てて考え込んでいる。もしかしたら踏み込み過ぎだっただろうか。

「あの、もしもキッチンに他人が立つのがお嫌でしたら」
「いや、そうじゃない。君はよく危なっかしいと言われないか?」

そう尋ねられ、野々花は首をかしげた。子供の頃から『しっかりしてるね』とは言われても、『危なっかしい』だなんて言われたことがない。

「いえ、言われませんが……」
「強引に連れてきた俺が言うのもおかしな話だが、男の家で安易に風呂を勧めたり手料理を振る舞おうとしたら、大抵の男は勘違いするぞ」

意味を理解した野々花は真っ青になって否定した。

「あのっ、そんなつもりじゃ」

野々花は純粋に役割を分担して、双子が眠るまでの時間をスムーズに過ごせたらと考えての言動だった。

けれど、一哉が雇っていたベビーシッターを解雇したのは、彼の見た目や肩書に惹かれて言い寄ったからだ。もしかしたら、同じように一哉に言い寄っていると思われたのだろうか。

慌てて手と首をブンブンと振って否定すると、一哉はおかしそうに笑った。