「実家は群馬なのですが、新幹線を使っても片道二時間以上かかる場所なので通うのは難しいんです。かといってホテル代を払い続けるのも難しくて、今はその……ネットカフェに。なかなか新居が決まらない上、罹災証明書を出したのが遅かったのか、公営住宅はいっぱいになってしまって」
罹災証明書を申請すると、緊急時用の公営住宅を借りられる制度があると知ったのは火事から二日経ってから。火事の夜に消防が説明をしていたらしいのだが、野々花は大学生の女の子たちに付き添っていたため聞き漏らしていたらしい。
言い訳めいた口調になってしまったのは、さすがにいい年をしてネットカフェ難民になっている現状に羞恥を感じているからだ。
ちらりと上目遣いに一哉の反応を窺うと、彼は目を見開いて絶句している。
「……我が社の給料は、そこまで逼迫させるような薄給ではないと思っていたが、俺の認識不足だったか」
「いえ! 十分頂いています!」
野々花は慌てて否定した。給与の問題ではなく、野々花個人の問題なのだ。
実家にはまだ学生の弟妹がいる。母ひとりに負担をかけるわけにはいかず、野々花は給料の大半を仕送りしているため、新居を探しているものの家賃の折り合いがついていないだけだ。



