「いえ。改めてお礼を言っていただくようなことは、なにも」
「早速だが、君に話があるんだ」
「は、はい」
誰にも言わないと宣言したのに、わざわざ呼び出すなんて一体どんな話をされるのだろう。
口を真一文字に引き結び、一哉の言葉を待つ。彼は背筋を伸ばして姿勢を正すと、真剣な表情でこちらを見つめてきた。
「頼む。姉が帰国するまでの二ヶ月間、俺と一緒に双子の面倒を見てくれないだろうか」
社長である一哉に頭を下げられ、野々花は言葉の意味を考える前に慌てふためく。
「しゃ、社長! 頭を上げてください……!」
「君は俺の甥っ子の命の恩人だ。それに、子供の扱いにとても慣れていそうだった。非常識な頼みだとわかってるが、ぜひ君に頼みたい」
「……甥っ子?」
社長に頭を下げられた上、もたらされた情報が多すぎて処理しきれない。そんな中、いの一番に野々花が拾ったのは『甥っ子』というワードだった。



