「失礼いたします」
中には秘書の岡田はおらず、一哉ひとりだった。
「広報部の宮部です。岡田さんから社長がお呼びだと伺ったのですが」
「あぁ。どうぞ、そこに座って」
応接ソファに促され、野々花は身体を縮こまらせながら腰をかける。それを見届けると、一哉も向かいに座った。
「わざわざ来てもらって悪い。先日は本当にありがとう。あの日、きちんとお礼ができなかったから」
やはりその話だったかと、野々花は内心冷や汗をかく。
(なにも見なかったことにした方が、お互いの身のためだと思います……! 私は絶対喋らないので!)
とはいえ、お礼を告げられてしまっては反応しないわけにいかない。



