声をかけると、彼女たちの表情が明らかにホッとした。つい数カ月前まで高校の制服を着ていた彼女たちにとって、四月に二十八歳になった野々花は頼りがいのある大人に見えたことだろう。
ふたりを連れて人垣のできている所へ行ってみると、すでに消防車だけでなくパトカーや救急車も到着していた。消火活動と並行して住人の身元と安全の確認がなされており、明日改めて現場の見分を行うと聞かされる。
『ご家族には電話しましたか?』
『は、はい。両親がこれから車で迎えに来てくれるって……』
『私もです』
野々花は消防隊員に許可をとってマンションを離れ、彼女たちの家族が迎えに来るまで近くのファミレスで一緒に待つことにした。無事に迎えが来た彼女たちにお礼を告げられながら別れると、次は自分だと慌ててビジネスホテルをとった。
恐怖に震える十代の子たちの前では毅然としていなくてはと気を張っていたが、野々花だって初めて火事を目の当たりにして怖かったし、明日以降のことを考えたら不安になる。それでも気丈に振る舞うのは、幼い頃からの性格ゆえだ。
実家は同じ関東とはいえ遠方で、野々花は五人きょうだいの長女として育った。五年前に父が事故で亡くなり、学生四人を抱えた実家の家計は火の車。野々花が毎月給料の三分の一を仕送りして、なんとか妹と上の弟を大学へ通わせてあげられている。自宅が火事になったなどと報告したら、きっと心配をかけてしまうに違いない。



