「失礼します」
やってきたのは、一哉の秘書を務める岡田だった。一哉や相澤と同じ大学の後輩で、シルバーフレームの眼鏡が似合う男性だ。
「お疲れ様です。今日の業務がすべて終わりましたら、退勤前に社長室に来て欲しいとのことです」
岡田は相澤ではなく、野々花に向かってそう言った。
「え? 俺じゃなくて野々花ちゃん?」
「はい。宮部さんにそう伝えてほしいと」
「わ、私ですか?」
驚きつつも、実はいつか呼び出されるのではないかと朝から戦々恐々としていた。
(隠し子の存在を知ってしまったせい、だよね……?!)
業務上、社長と打ち合わせをすることもあるけれど、基本的には今日のように会議室を取っている。社長室に入ったことなど、これまでに一度もない。



