火災から三日。当日は慌てて近くのビジネスホテルに泊まったが、その生活をずっと続けていれば貯金はすぐに底をついてしまう。仲のいい友人はみんな地元に残っているし、同僚にしばらく泊めてほしいと頼めるほど甘え上手でもない。
不動産屋も何件か見て回ったけれど、やはりなかなか条件に合う物件は見つからなかった。
実家から通うことも考えたが、新幹線を使っても片道二時間はかかるし、定期代が会社規定の限度額をオーバーするため自己負担が出る。それに、やはり家族には心配をかけたくない。
そのため、野々花は新居が見つかるまではネットカフェで寝泊まりすることにした。狭いけれど小柄な野々花なら一応横になって眠れるし、シャワーなどの設備が綺麗な店舗を選んだ。とはいえ、これから先の不安と安眠できない環境のため寝不足で肌荒れも酷い。
副社長相手に「実は、自宅が火事で燃えまして」などと雑談はできないが、広報部の部長と人事部には報告済みで、災害見舞金として三万円が支給されると聞いた。それだけでも、とてもありがたい。
(大丈夫。なんとかなる、なんとかなる)
呪文のように毎日繰り返している言葉で自身を落ち着け、相澤との打ち合わせを終えた時、会議室の扉がノックされた。



