週末を挟み、月曜日。
リビングには野々花以外誰もいない。双子は朝から保育園へ行っており、美月も仕事へと出掛けていった。野々花は祈るような気持ちでテレビの前に座っていた。
さすがに民放局が中継することはないようだが、VODでリアルタイムで配信されている。会場にはすでに大勢が詰めかけており、記者だけでなく三脚が多く立てられていた。普段顔出ししない社長が矢面に立つとあって、かなりの注目度の高さだ。
配信を見ながらコメントができる機能もあり、すでに百件以上のコメントがついている。その多くは個人投資家らしく、ネイバークリプトの製品のユーザーのようだ。批判するものではなく冷やかしが大多数だが、ユーザーが離れてしまうような事態は避けたい。それはこの会見にかかっているのだ。握った拳に汗が滲む。
そうして始まった会見の司会を務めているのは、野々花の上司の槇原だった。彼がこの会見の概要を端的に説明し終えると、一哉が壇上へと上がる。
均整のとれた体躯にひと目で上質とわかるスーツを身につけた一哉が会場全体を見渡すと、会場の空気が一変したのがテレビの前にいる野々花にも伝わってきた。誰もが彼の圧倒的なオーラに気圧されている。
(あ、ネクタイピン……つけてくれたんだ)



