「余程、益田社長の娘さんに手を焼いていたんだろう。会話を録音していたそうだよ」
「録音? では記事が事実無根だという証拠は、その音声データですか?」
「そのようだね。なんでも報復を仄めかすような発言もしていたらしいから」
先日、再び亜沙美が訪ねてきたというのは一哉から聞いていた。けれど、まさか会話を録音していたなんて思いもしなかった。
「宮部さん、これから社内外問わず周りが騒がしくなるだろう。幸い今日は金曜日だ。落ち着くまで君は一旦自宅待機にしようか」
「えっ、そんな――」
「勘違いしないでほしい、決して厄介払いをしたいわけではないよ。もちろん、君を今後社広報のチーフから外すなんてこともあり得ないと約束する。ただ、今回の件については僕に任せてほしい。責任を持って対応するよ」
上司からそう言われては、食い下がれない。それに、当事者が対応にかかわっていては他の社員だってやりにくいだろうことは想像できる。
野々花は槇原に文乃と三柴のことを頼み、彼らに挨拶をして社を出た。
すると、そのタイミングを見計らっていたかのようにスマホが着信を告げる。



