本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


野々花は出てきたばかりのミーティングルームから少し離れた廊下の壁にもたれかかり、ぎゅっと目を閉じる。

(……当然の判断だよね)

野々花がこの案件から外されたのは、決して理不尽な宣告ではない。会社として正しい判断を下しただけだと理解はしている。

それでも、どうしても苦しくてやるせない気持ちが込み上げてくる。

まさか一哉と付き合い始めて一ヶ月も経たないうちに、こんな問題が立ちはだかるとは思ってもみなかった。彼と過ごす時間はとても幸せで、愛される喜びを知らない以前には戻れないと感じるほど、毎日が彩りに満ちている。

そんな愛おしく大切な日々が、悪意を持って嘘とともに全世界に広められてしまった。

今朝、突如として危機対応チームが招集され、一哉をはじめとした経営陣と法務部、広報部の役職付きが一同に集められた。そこで自身のタブレットに共有された記事の見出しを見て、野々花は喉元にナイフを突き立てられたかのような錯覚に陥った。

記事のタイトルにはゴシップ誌にはありがちな煽り文句が並んでいる。断定することなく『◯◯か?』と疑問符をつけていれば許されるかのような書き方は、彼らの業界ではお決まりの見慣れたスタイルだ。