「編集部に苦情を入れたんだ。あれからまだ半年も経っていない。記者の名前は覚えてる」
「なるほどな。左遷されて逆恨みでもしたか。それで益田からの依頼に飛びついたってところだろうな」
「迷惑な話だ」
「ま、初スキャンダルおめでとう。これで一人前だな」
「言ってろ」
軽口を叩きつつ鋭い目つきになった相澤とともに、すぐさま対応を練るため各部署へ連絡し、ミーティングルームへ招集する。これまでの熱愛スキャンダルとは違い、明らかな名誉毀損の記事である。契約している顧問弁護士とも連携を取り、今後の法的手段を検討しなくてはならない。
たかが三流のゴシップ誌になにを書かれたところで痛くも痒くもないが、一哉の懸念事項は野々花のことだ。
一般人が誌面に載る経験などは滅多にないし、それが隠し撮り写真つきの悪意のあるスキャンダルとなればなおのこと。彼女はきっとショックを受けるだろうし、真面目で責任感のある野々花のことだ、自分のせいで株価が下落したり自社製品のブランド価値を毀損してしまったりといった影響が出るのではと不安になるはずだ。
とはいえ、事前に野々花に会ってゆっくり説明をしている時間もない。益田証券の不祥事が表に出る前に片をつけなくては、万が一にも泥舟が沈むのに巻き込まれるのは御免だった。



