本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


亜沙美が野々花に接触していたと彼女から聞いた時は、腹立たしさで目眩がした。社内の噂を聞き、野々花のことを調べたのだろう。会社の関係性を持ち出した上、一哉に亜沙美と結婚する意思があるような発言をして、身を引くよう迫ったらしい。二度とそんな真似をしないよう釘を刺しておかなくては。

岡田に案内させて応接室で亜沙美に対峙すると、ニコリともせずに彼女を見やった。

「ええ、聞いています。それで、あなたは俺になにを求めているんですか? 縁談はきっぱりとお断りしたはずですが」
「その理由をお伺いしているんです! お父様に聞いても『それどころじゃない』なんて言って話を聞いてくれないし。もしかして、噂になってるあの子に本気だとでも言うんですか? あんなパッとない女に私が負けるとでも? 私の方があなたの妻に相応しいはずです」

亜沙美は何度も父親とともに会社に押しかけてきたことがあるけれど、今日のように単身乗り込んで来たのは初めてだ。彼女の言う通り、益田は今それどころではないのだろう。

「俺の妻に相応しいとは?」
「見た目も経歴も家柄も、すべてです! それに父への恩義もあるのでしょう? 父はあなたの優秀さを買っているし、私も一哉さんのためなら仕事を辞めて家庭に入ってもいいと思っています」