おずおずと一哉に着いてきてほしいと伝えてくれる野々花はいじらしく、控えめで家族思いなところがなおのこと愛おしい。
彼女が母に電話して予定を聞いてみると週末は家にいるとのことで、早速挨拶へ出向く運びとなったのだった。
「群馬は一度も行ったことがないんだ。楽しみだな」
「えっと……本当になにもないですよ? めちゃくちゃ田舎ですから」
「野々花の育った場所を見たいんだから、君の実家にお邪魔できれば十分だ」
賑やかな観光スポットも、都心のような洗練された場所も必要ない。ただ彼女がどんな場所で幼い頃を過ごしたのかを感じ、彼女が大切にする家族に挨拶をして、結婚相手として認めてもらうのが一哉の目的だ。
東京を出発して約五十分、高崎駅で在来線に乗り換えてさらに一時間。自然豊かなこの街は、昼夜の寒暖差が大きいという気候もあり農業が盛んらしい。観光農園も多くあり、旬のフルーツ狩りも楽しめるようだ。
「おかえりなさい、野々花。久しぶりね」
「うん、ただいま。ごめんね、急に帰ってきて」
「なに言ってるの。いつでも帰ってきていいに決まってるでしょう」



