本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


午後は先月から取り掛かっているプレスリリースの執筆を進め、法務部へリーガルチェックを依頼する。午後四時になると三柴と文乃に「副社長との打ち合わせに行ってくるね」と告げ、席を立った。

ネイバークリプトは都心のオフィスビルの十階と十一階に拠点を構えている。フロアの中央に吹き抜けの階段があり自由に行き来ができるようになっていて、野々花の在籍する広報部は十階にある。

階段を上がって予約しておいた十一階の会議室に入り、タブレットで資料をもう一度確認する。すると、程なくして副社長の相澤和真がやってきた。

「お疲れ様です」

野々花が立ち上がって軽く会釈をすると、彼はにこやかに「やぁ、野々花ちゃん。お疲れ様」とヒラヒラ手を振った。

前髪をセンターで分けた色素の薄いブラウンの髪は緩いパーマがかけられ、いつも人好きのする笑みを浮かべている。

大学時代の一哉の同級生であり、このネイバークリプトを立ち上げたひとりである相澤は、硬派な印象の一哉とは反対に少しチャラそうに見える。