野々花は緩慢な動きでパチパチとまばたきを繰り返すと、突然ぶわっと頬を真っ赤に染めた。昨夜のあれこれを思い出し、恥ずかしくなったのだろう。彼女はシーツを額まで引っ張り上げて隠れてしまった。
「……お、はよう、ございます」
それでも消え入りそうな声で挨拶を返す律儀さに、愛しさが溢れ出す。
(こんな可愛い反応をされると、また欲しくなる)
野々花自身が言っていた通り、彼女は初めてだった。
これまで接してきた様子を見るに男慣れしていないのはわかっていたし、もしかしたら交際経験もないかもしれないと感じていた。
だからこそ、想いを伝えてすぐに抱くつもりはなかった。『結婚前提の同棲』を嘘から出たまことにできたのなら、焦らずとも時間はたくさんある。野々花の心の準備が整うのを、なけなしの理性を総動員して待つつもりだった。
けれど、そんな誓いを打ち崩したのは、恥じらいながら打ち明けてくれた野々花の言葉だった。



