本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


「他には? なにか嫌なことは言われなかった?」
「いえ。ただ、益田証券は一哉さんにとって恩のある相手で、益田社長がふたりの結婚を望んでいるのだと」
「……そうか。嫌な思いをさせて悪かった。近々、益田証券との契約は解除される。まだ詳しくは言えないが、きっと社長はそれに焦って俺と娘を結婚させたいと考えていたんだろう。俺がそばにいてほしいのは君だけだ」

彼の気持ちを疑う余地はどこにもない。いや、むしろ最初から疑ってはいなかった。一哉の瞳は、ずっと以前から雄弁に野々花への気持ちを語ってくれていたから。

少しの不安もない状況でないと自分の気持ちを打ち明けられないなんて臆病だと思う。それでも、初めての恋に飛び込むには勇気が必要だった。

「亜沙美さんは……そういった政略的なものじゃなく、一哉さんを気に入っていたみたいですけど」
「誰にどう思われても関係ない。俺が好きなのも、結婚したいと思うのも、好きになってほしいと願うのも、野々花だけだ」

真摯な熱を帯びた瞳が野々花をとらえる。膝に置いた手をぎゅっと握られ、まるで離さないと言われているかのように感じた。そのぬくもりに、心が大きくときめく。

彼の手から伝わる熱に浮かされ、気持ちを言葉にのせた。