この気持ちをどう伝えたらいいのだろう。初めての恋が成就した嬉しさと、相手が自社の社長だという懸念が同時に湧き上がってきて、頭の中が混乱している。好きな人に結婚前提の交際を申し込まれるなんて望外の喜びだが、彼ほどの男性の相手が自分でいいのだろうかと心が不安に揺れた。
それに、たびたび父親とともに会社に来ていた亜沙美のことも気がかりだった。彼女は野々花と一哉の噂を聞きつけ、わざわざ縁談が進んでいるのだと忠告しにきた。その際、一哉が彼女に『仕事を辞めて家に入ってほしい』という要望を出したという具体的な話までしている。とても嘘とは思えなかった。
「本当に、私でいいんですか? 」
「野々花がいいんだ」
希うような響きに、野々花の胸は大きく高鳴る。
彼の気持ちを信じたい。この恋心を打ち明けたい。そのためには疑念をすべて払拭しておきたかった。
「……益田社長の娘さんと、縁談が持ち上がっていますよね」
一哉の眉が不愉快と言わんばかりに歪み、大きなため息をついた。



