本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


「さっきも言ったけど、二ヶ月間なにもトラブルなく過ごせたのは野々花のおかげだ。本当にありがとう」
「私こそ、ここに置いてくださってありがとうございました。おかげで実家への仕送りを減らさずに済みました」

改めて感謝を込めて頭を下げる。

本当はもっと伝えたい言葉があるけれど、それを言うには大きな覚悟が必要となる。

これまで恋愛とは無縁だったせいで、この気持ちをどう伝えたらいいのかわからない。「好き」と言えばいいだけだとわかってるけれど、迷惑だと思われたり困らせたりするのではと考えると、安易に口にするのは憚られた。社長と一社員が恋愛をするには、いくつもの分厚い壁が立ちはだかっている気がする。

臆病風に吹かれ自分の気持ちを伝えるのを躊躇う野々花だったが、一哉はその壁を一足飛びに超えてきた。

「過去形で言うのはやめてくれ」
「……一哉、さん?」
「俺は、このままこの家にいてほしいと思ってる」

見上げれば、あの熱く甘い眼差しが向けられていた。