本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


突然の提案に野々花が驚く間もなく、一哉は即座に「ダメに決まってるだろ」と突っぱねた。その声は先ほどよりも格段に低く、じろりと美月を睨みつけている。

「やぁね、冗談じゃない。そんなに睨まないでよ。独占欲の強すぎる男は嫌われるわよ」

上品に、けれど面白がっているのを隠しきれない顔で笑った美月は、双子を連れて颯爽と帰っていった。

嵐が過ぎ去ったように、室内には静寂が訪れる。これまでが賑やかだっただけに、この静けさは一層寂しく感じてしまう。そして双子が帰ったということは、野々花もここを出ていかなくてはならない時がやって来たのだ。

三人を見送ったまま玄関で立ち尽くしていた野々花は、一哉にリビングのソファへと促された。少し間隔を空けて座った瞬間、野々花はなにかに急かされるように口を開いた。

「帰っちゃいましたね。一気に静かになったから、なんだか落ち着きません」
「そうだな。毎日賑やかだったから」

ソファから見える位置にも、双子がここで過ごした痕跡が溢れている。それらを目にすると、やはり少し寂しく感じてしまう。