「いえ。一哉さんは取引先との打ち合わせと言っていたので、スマホを見られないのかもしれません。夕食前には戻るとおっしゃっていたので、あと二、三時間で帰ってくると思います」
「そう。土曜日だっていうのに相変わらず忙しくしてるのね。でも一哉があの子達を預けてもいいと思うくらいには、あなたは優秀なシッターなのね。ありがとう。二ヶ月間、お世話になりました」
「いえ、そんな」
「宮部さんと言ったかしら。あなたはどこの会社のシッターさん? 以前私が紹介した会社のシッターは一哉が解約しちゃったらしいの。ああ見えて他人に厳しいから。一哉が信頼を置くのなら、次から私が一時預かりを利用したい時にはあなたを指名したいわ」
どうやら一哉は、どういう経緯で野々花が双子の世話をしているのかを美月に説明していないらしい。野々花は「あの、実は……」と経緯を説明した。
自分はシッターの資格はなく一哉の会社の社員であること、野々花の自宅が火事に遭い一時的に住むところがないこと、弟妹で慣れているため子供の世話ができることなどを理由に、住み込みでシッターを頼まれたのだとありのままを話した。
徐々に声が小さくなってしまったのは、一哉の身内である美月に現状をどう思われるかが怖かったからだ。
口を挟まず静かに野々花の説明を聞き終えた美月は、優雅な仕草で麦茶を飲むと、じっとこちらを見つめてきた。



