本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


誕生日パーティーから二週間が経った。

野々花は自身の恋心を自覚したものの、一哉に気持ちを告げたり亜沙美との関係を聞いたりはしていない。頻繁に来ていた益田親子の訪問が減ったため、社内の噂が比較的落ち着いているのが理由のひとつだ。

一哉のマンションに住み始めたのは六月の終わり。あれから間もなく二ヶ月が経とうとしている。一哉からはなにも聞いていないけれど、予定通りならばあと数日もすれば美月が帰国するだろう。そうなると、野々花がここにいる理由はなくなる。

けれど、いまだに新居は決まっていない。

『本当に必要になったら、俺が必ず責任を持って用意する』

そう一哉は言った。『もちろん、そうならないのが一番なんだけど』とも。

一哉は相変わらず優しく、自宅では時に熱っぽい眼差しを向けてくる。そのたびに野々花の心臓は高鳴り、期待に胸が疼く。

自惚れてはいけないと否定し、すぐにまた性懲りもなく期待する。何度同じことを繰り返すのだろうと自分に呆れてしまうけれど、心はままならない。こんなふうに感情が激しく浮き沈みするなんて、恋心とは厄介だ。