本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


「ネクタイピン?」
「はい。なににしようか迷ったんですけど、感謝の気持ちを形にしたかったんです。主張しないシンプルなデザインですし、どんなスーツやネクタイにも合うとお店の人に聞いて」

そう説明する間も、一哉の視線はネクタイピンから動かない。もしかしたら趣味に合わなかっただろうか。それとも、やはり恋人でもない相手から身に着ける類のプレゼントは迷惑だっただろうか。野々花は急に不安に駆られた。

(いくら一緒に住んでるからって、ネクタイピンをプレゼントするのは馴れ馴れしすぎたのかも。もっと無難なものにすべきだった……?)

「あ、あの、私がお祝いを渡したかっただけなので、もし気に入らなかったら無理に――」
「気に入らないなんてあり得ない。本当に嬉しい。ありがとう」

視線を上げた一哉は言葉通り本当に嬉しそうで、嘘をついているようには見えない。その顔を見て、野々花はほっと息を吐いた。

「悪い、まさか俺にまでプレゼントを用意してくれているとは思わなかったから、嬉しすぎて反応が鈍くなった」
「よかったです。店頭で見かけた瞬間に一哉さんに似合いそうって思ったら、それ以外のプレゼントは思いつかなくなってしまって」

男性にプレゼントを贈るのは初めてで勝手がわからず、自分の直感に従う以外に道はなかった。