「あっ、あの……」
俯くことも視線を逸らすこともできずにいると、一哉はさらに笑みを深めた。
「俺たちも朝ごはんにしようか」
「……はい」
一体彼はなにを考えているのだろう。亜沙美は一哉との縁談が進んでいるような口ぶりだったが、一哉からそうした話は一切ない。
政略結婚ならば一社員である野々花に話す段階ではないのかもしれないけれど、一哉がなにを考えているのかも、彼の眼差しや言動にいちいちドキドキしている自分の気持ちもわからない。
そわそわと浮ついた気分になるたび、野々花は当初の同居の目的を思い出した。
一哉は、彼に好意を抱かない女性シッターを求めていたのだ。野々花は双子の世話の手伝いをするのを条件に居候させてもらっているにすぎない。
彼の自宅にお世話になり始めて、一ヶ月以上が経った。予定通りならば今月の下旬には双子の母親である美月が帰国するはずだ。



