「ええ。父は政略結婚のつもりでしょうけど、私は構わないわ。だって過去に付き合った男たちなんかより、彼はずっと素敵だもの」
亜沙美は過去に自分が交際していた有名人を羅列する。俳優やミュージシャンといった野々花でも知っているような名前が次々と出てきて驚くが、そんな彼らの中でも一哉は格別だとうっとりと目を細めた。
「父は無能な人間を嫌うけれど一哉さんには一目置いているようだし、見た目だけでなく知性や仕事への情熱も兼ね備えているなんて結婚相手として最適よ。本当なら仕事を続けたかったけど、彼は妻になる女性には家に入ってほしいようだし、私は要望に応えてモデルを辞めるつもりなの。もう事務所にも話を通してあるわ」
亜沙美の言葉に、野々花は静かに衝撃を受けた。
『この年になると色んな相手から見合いや結婚を勧められて、正直うんざりしてるんだ。君と結婚前提で付き合っているという事実があれば、断りやすいし助かる』
一哉がそんな風に言っていたのは、たった二週間ほど前だ。益田や亜沙美が一方的に盛り上がっているだけかと思いきや、一哉は彼女に〝家に入ってほしい〟という希望を伝えているらしい。自己顕示欲が強そうな亜沙美がモデルを辞めると事務所に通達済みということは、前向きに検討している段階なのだろうか。



