「あまり安っぽいカフェは好きじゃないんだけど、仕方ないわね」
チクリと嫌みを織り交ぜながら、亜沙美は野々花についてくる。カフェに入って互いに注文を済ませ、飲み物が届くと彼女はすぐに口火を切った。
「今、一哉さんと父の間で私たちの結婚話が出ているのはご存知?」
やはりその話題だったかと、野々花は口を引き結んだ。噂ではなく、実際にふたりの間には縁談が持ち上がっているらしい。
「……いえ」
「先ほども言ったけど、あなたと一哉さんがお付き合いをしているという噂を聞いたの。もちろん私にだって過去に男性と交際していた経験はあるから、彼やあなたを責めたりしないわ。それに、一哉さんはあなたとはなんの関係もないと言っていたし」
「……一哉さんが?」
彼女がどういう尋ね方をしたのかわからないが、『なんの関係もない』という強い言葉に表情が固まる。思わず社長を名前で呼んでしまったが、動揺している野々花はそれに気付かない。
その様子を面白そうに眺めながら、亜沙美は歌うように話を続けた。



