文乃や三柴は馴れ馴れしくするわけではないけれど徹底したビジネスライクというわけでもなく、適度にプライベートな話もするし、一緒にランチをとったりもする。こうして仕事に関係のないことでも心配して声をかけてくれる優しい後輩を持ち、幸せだなとしみじみ感じたのだった。
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じめっとした梅雨はあっという間に過ぎ去り、連日うだるような暑さが続く七月の終わり。一歩外に出れば命の危機を感じるほど気温が高い。
野々花と一哉の噂が落ち着いたかと思いきや、社内には別の噂が持ち上がっている。
「ねぇ、聞いた? また社長のところに益田親子が来てたんだって」
「ここ最近、毎日じゃない? やっぱり政略結婚の話が持ち上がってるって本当なのかな」
「副社長との記事が出たけど、実際は社長狙いだったってこと? でも社長はうちの社員と付き合ってるって噂なかった?」
定時を過ぎ、退勤する社員がエレベーターを待つ列が出来ている。そこで聞こえてきた話し声に自分の話題が出ると、野々花は気配を消して静かに俯いた。



