「でも先日の宮部さんの口ぶりから察するに、実際は付き合ってないんですよね? 結婚前提だって話がかなり広まってますけど、いいんですか?」
文乃とは違い、三柴は納得のいかない顔をしている。きっと心配してくれているのだろう。野々花は大丈夫だと頷いてみせた。
「あまり広がるのは困るけど、その方が変な噂を立てられずに済むから」
「そうやって社長に丸め込まれたんですよね。真剣な交際って言っておけば、社長はパワハラとかセクハラなんてことは言われませんから。でも宮部さんは? お似合いカップルだって言う人もいれば、さっきの後藤みたいなことを言う奴だっているし、ベビーシッターの役目が終わったら放り出されるんですよね?」
「それは……」
野々花も同じことを考えたけれど、彼は『野々花が困るようなことには絶対にならないから』と言ってくれた。それを信じようと自分自身で決めたのだ。
(でも、一哉さんのお姉さんが帰国したあとの話はなにもしてない……)
小さな不安が芽吹き、野々花は答えられずに口を引き結ぶ。すると、文乃が三柴の背中を思いっきり叩いた。



