本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


デスクにバッグを置いた途端、文乃が興奮気味に語りだす。

「もう、社長がほんっとうにカッコよかったんですから! 倒れた野々花先輩を軽々と抱き上げて、私と健先輩が付き添うって言っても『俺が行く』って譲らなかったんですよ。まるでお姫様を護る騎士みたいでした!」

野々花は熱で朦朧としてしまって意識がなかったけれど、一哉に抱き上げられたところを文乃をはじめ大勢の社員に見られたのだと思うと居た堪れない。

「それは……できれば忘れてもらえるとありがたいかな」
「無理です! めちゃくちゃ尊くて拝みたくなりましたもん」
「オタク炸裂の感想だな」

呆れ声の三柴のツッコミを気にも止めず、文乃は続ける。

「あの場にいた全員が社長と野々花先輩の関係が気になって仕方ない様子だったけど、さすがに聞ける雰囲気じゃなくって。でも社長が去り際に言ったんです、『公私混同は一切しないと誓う。だから彼女を煩わせるような言動は控えてほしい』って」
「……え?」
「付き合ってるとか、そういう関係性は明言しなかったですけど、社長が野々花先輩を大切に想ってるっていうのがビシビシ伝わってきました! これはもう見守る一択だって、あの場にいたほとんどの社員の共通認識だと思います」