(まるで、一哉さんが私のこと……)
野々花は弾かれたようにブンブンと首を横に振る。そんなはずはない。そもそも、本当に付き合っているわけではないのだから元カノもなにもない、という意味だろう。
期待にも似た感情が湧き上がり、速まる鼓動を抑えるのに苦労する。
一哉から視線を外し、ぎゅっと胸元を握りしめると、彼が小さく息を吐いた気配がした。
「悪い、困らせたいわけじゃないんだ。ダメだな、余裕がない……」
「一哉さん……?」
「君に対して誠実でありたい。だから……本当に、早く姉が帰ってくるといいんだけど」
一哉がなにを言わんとしているのかわからない。ため息混じりの呟きは、ほとんどひとり言のように聞こえる。しかし、続いた彼の言葉は野々花をさらに困惑させた。
「それから、新居探しは少し待ってほしい」
「えっ、でも……」



