本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


(この同居生活が終わったら、私たちはなんに繋がりもなくなるのに)

そう考えただけで、鉛を飲み込んだように胸が重苦しい。偽りの関係を公表するなんて、やはり野々花にはとてもできそうにない。

「この同居が解消されたら関係を偽る必要もなくなって、周りは私たちが別れたのだろうと認識しますよね。私はずっとこの会社で働いていたいのに〝社長の元カノ〟なんて立ち位置は居心地が悪すぎると言いますか……」

本音をすべて口にはできず、思いついた理由を告げる。そんな野々花に、一哉は静かに言った。

「元カノになんてさせない」

肌が焼けそうなほどの熱を感じる眼差しで射抜かれ、野々花は息を呑んだ。彼の発した言葉の意味を理解しようと頭を働かせるけれど、どうしてだかうまくいかない。

「ど、どういう意味、ですか……?」
「そのままの意味だよ」

彼の言葉をシンプルに捉えるならば、〝関係を終わらせたくない〟〝別れるつもりはない〟という意味だ。脳裏に自惚れた考えが浮かぶ。