本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


近頃はコンプライアンスも厳しく、些細なことがSNSで炎上する例も珍しくない。けれど結婚前提の相手ならば誰に咎められることでもなく、公私を分ければ問題ないはずだと一哉は説明した。

たしかに、社長がいち女性社員を自宅に連れ込んでいるなんて噂が立ったら困るのは一哉だ。それは野々花もわかっている。だからこそ、この同居を続けていいのか迷っていたのだ。

「それに、面倒な見合いや結婚話を避けられる」

そう言うと、彼はうんざりした様子で前髪をかきあげた。その仕草が妙に色っぽくて、心臓がドキンと跳ねる。

「この年になると色んな相手から見合いや結婚を勧められて、正直うんざりしてるんだ。君と結婚前提で付き合っているという事実があれば、断りやすいし助かる」
「でも、だからって私が一哉さんの恋人役なんて無理があるのでは……」

容姿もステイタスも超一流の一哉と、宿なしのOLの野々花では釣り合わないことこの上ない。それでも、きっと一哉が野々花との交際を認める発言をすれば、一日と経たずに社内中に広がるだろう。

他人から彼の恋人と認識される恥ずかしさと、本当は愛されていない現実の狭間で苦しむ自分の姿がありありと想像できる。