「もしもし。お母さん?」
『おはよう、野々花。こんな朝早くにごめんね。この時間しかゆっくり話す時間が取れなくて』
「おはよう。起きてたから大丈夫。それより、どうしたの?」
ドキドキしながら用件を聞くと、母の口から出たのは意外な言葉だった。
『先週ね、ご近所さんからたくさん野菜をいただいたのよ。ほら、お向かいの島田さん、覚えてる? 娘さんが農家にお嫁にいったんだけど、うちじゃ食べきれないくらい夏野菜をくださって。それで野々花にも送ったんだけど、配達できないって戻ってきちゃったのよ』
「あっ……」
心配させたくなくて、家族には火事について話していない。何も知らずに自宅マンションに荷物を送ったが、配送不可で実家に戻されたのだろう。
(しまった。郵便局には一応転送届を出したけど、宅配便に関してはなにも手続きしてなかった……)
野々花は観念してマンションが火事になり、新居を探しているところだと説明した。すると母は電話口で絶句したあと、大きなため息をついた。



