にもかかわらず、こういった根も葉もない噂が社外に広がったらと思うとゾッとする。間違いなくイメージダウンは避けられない。
俯いた野々花の頬を包むように一哉の手が添えられる。視線を向けると、真剣な光を帯びた漆黒の瞳がこちらを見据えていた。
目を逸らそうと思うのに、魅入られたように視線を外せない。
「野々花、俺は周囲がなんと言おうと――」
一哉の言葉を遮るように、スマホの着信音が鳴った。ビクッと身体が跳ね、近づきすぎていた距離に恥じらいが湧く。
(今、一哉さんはなにを言おうとしていたんだろう?)
鳴ったのは野々花のスマホだ。見ると、そこには母の名前がある。一哉の話の続きも気になるけれど、こんな時間に電話をしてくるなんて珍しく、一抹の不安がよぎる。家族になにかあったのだろうか。
「出ていいよ。なにかあったのかもしれないし」
「すみません、ありがとうございます」
苦笑した一哉に小さく頭を下げて通話ボタンをタップした。



