本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


あれほど一緒に暮らすのに尻込みしていたのに、今ではこの生活を心地よく感じ、手放したくないとすら思っている。

けれど、これ以上噂になって一哉に迷惑がかかるのは絶対に避けたい。野々花は本音を飲み込み、理由だけを伝えた。

「週末の都立公園で私たちを見た社員がいるらしくて、かなり噂になっているようなんです。このままだと、一哉さんが悪く言われてしまうんじゃないかって……。中には、その……」

三柴に言われた『搾取』や『自宅に連れ込む』というワードが思い出されたが、とても口には出せなかった。周囲にそんなふうに思わせているなんて申し訳なさすぎる。けれど、一哉はなにも言わずとも察したらしい。

「あぁ、権力を使って我が社の美人広報を自宅に連れ込むパワハラ社長だと言われるんじゃないかってことか。まぁ、当たらずとも遠からずだからな」
「やっ、やめてください、全然違うじゃないですか!」

一哉は冗談めかして笑っているけれど、野々花にとっては笑い事ではない。広報部にいれば、企業のトップのイメージがそのまま企業のイメージに繋がるというのは痛感している。

一哉といえば、顔こそ出さないものの経済誌などで連載記事を持っているほどの強い専門性を持ち、独自の視点と先を読む観察眼を有する優秀な実業家だ。そこに相澤の華やかさが加わり、ネイバークリプトは今や金融業界では知らぬ者はいないほどの企業に発展し、若い世代にも認知度が上がっている。