「食欲は?」
「……実は、お腹が空いて早くに目が覚めたんです」
「よかった。じゃあ朝食にしよう。消化がいいものの方がいいよな」
「あ、私が……」
作ります、と続けられなかったのは、凄みのある笑顔で制されてしまったからだ。
「時間もあるし、俺が作る。ソファで待ってて。リビングの片付けもしなくていい。あとでふたりに手伝わせるから」
「……はい」
「いい子だ」
野々花は大人しくリビングのソファに座り、手際よく料理をする一哉を眺める。基本的に自分からせかせか動くタイプのため、誰かが働いているのに自分だけ座っているのはどうにも落ち着かない。
キッチンで機嫌よく料理をする一哉を見ながら、昨夜のことを思い出す。
あのあと、一哉は本当に野々花が眠るまで手を握ってくれていた。子供のような要求に笑うことなく、ずっとそばにいてくれたのだ。



