「おはよう。起きて大丈夫なのか?」
「おはようございます。昨日はご迷惑をおかけしました」
「言ったろ、迷惑なんかじゃないって。体調は?」
「熱も下がりましたし、ふらつきもないので大丈夫です」
一哉は大きな歩幅で野々花のそばまで来ると、手のひらを額に当てた。
(わっ……)
思わず肩を竦めたが、一哉は真剣な表情で野々花を見つめている。その眼差しを受け、昨夜の一哉の言葉が脳裏に浮かぶ。
『誰かに頼るのが苦手な君を甘やかす役目を、俺にくれないか』
『俺が君を守りたい。だから遠慮なく、なんでも言ってほしい』
(あっ、あれは、熱を出した私を安心させる言葉だっただけ。勘違いしちゃだめ)
繋いだ手のぬくもりと安心感まで鮮明に思い出してしまい、野々花はときめきそうになる自分の心を戒める。



