けれど、野々花が熱を出した時に繋いでもらった記憶はない。風邪をうつしたくないと、弟妹たちには部屋に入らないように言いつけていたから。
そんな昔の記憶が蘇り、おずおずと指先を一哉に伸ばしたところで羞恥が湧いてきた。
(子供じゃあるまいし、恥ずかしい……)
伸ばしかけた手を引っ込めかけた時、一哉の大きな手が野々花の手をぎゅっと握った。
「あっ……」
「野々花が眠るまで、ここにいる」
安心させるようなあたたかい微笑みに、目頭の奥が一層熱くなる。
「あ、あの、名前……」
手を握られているのもドキドキするけれど、それと同じくらい、甘く響く一哉の声で名前を呼ばれているのが落ち着かない。



