本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


野々花は熱で潤んだ瞳で彼を見上げた。これまでなんでもひとりで我慢してきた野々花にとって、手を差し伸べてくれる一哉の存在はとても大きく感じる。

「野々花。俺が君を守りたい。だから遠慮なく、なんでも言ってほしい」

初めて名前を呼ばれ、目をまたたかせる。そういえば、社員食堂で意識が遠のく前にも誰かが自分を呼んでいた気がする。

(あの声は、一哉さん……?)

あたたかい腕に包まれ、抱き上げられた。薄れていく意識の中、そのぬくもりに安心したのを思い出す。双子に接している一哉を見ているからだろうか、その包容力や優しさが頼もしく感じたのだ。

今もこうしてそばにいてくれて、大きな安心感を与えてくれる一哉に、野々花はつい甘えたくなった。

「あの、手を……」

子供の頃、弟妹が熱を出すたびに野々花が手を握ってあげていた。眠るまで手を繋いでいると、安心するらしくぐっすり眠ってくれるのだ。