本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


さすがにこれだけ注目を集めてしまっては、ここに居続けるほうが気まずい。野々花は「ありがとう、ひとりで大丈夫だから食べてて」と言って立ち上がった。

その途端、目に映る世界が粘土のようにぐにゃりとねじ曲がる。

(あっ、まずい、かも……)

身体がずっしりと重く、力が抜けていく。

「野々花!」

あたたかい腕に抱きとめられた気がするけれど、それが誰かはわからない。

(私を名前で呼ぶ男性なんて、お父さんくらいだったのに……)

大きくて、あったかくて、どうしてだか安心する――。

ゆっくりと溶けていく意識の中、野々花は身を委ねるように力を抜いた。