子供の頃からオーバーワークになるとよく熱を出していた。母親は弟妹にかかりっきりだったため、解熱剤を飲んでしばらく寝ていれば二日もしないで治るとわかってからは、ずっとそうしている。
「宮部さん、新居探しは進んでるんですか?」
「それが、あんまり。なかなか条件が合う物件がなくて」
「俺、よかったら紹介しましょうか?」
三柴の質問に、野々花は視線を正面に向けた。
「大学時代の友人が月城不動産に勤めてるんです。大手だから管理の質もいいし、今の俺のマンションもそこで紹介してもらったんですよ」
「ありがたいけど、月城不動産ってお高そうなイメージ。狭くてもいいから、できるだけ価格を抑えたいんだよね」
「えぇー? チーフに昇格したんだから、パーッと景気よくいきましょうよ! オシャレなデザイナーズマンションとかよくないですか?」
文乃の無邪気な提案に苦笑する。パーッと景気よくいけるのなら一哉と同居はしていないのだ。小声でそう指摘すると、文乃は「あ、そっか」と可愛く舌を出した。



