運よくソファー席が空いていたので、野々花と文乃が隣同士に座り、向かいに三柴が座る。文乃は水の入ったグラスを手にしながら肩を竦めた。
「……めちゃくちゃ見られてますね」
「ごめん。気になるよね」
「いえ、私は大丈夫ですけど」
「別に悪いことしてるわけじゃないんだから、堂々としてたらいいと思います」
三柴はそう言ってくれるが、昨日よりも明らかに視線が増えているのは、それだけ色んな噂が回ったからだろう。女嫌いと噂される一哉が自社の社員とデートしていたとなると、注目されるのは致し方ないのかもしれないが、一緒にいるふたりに居心地の悪い思いをさせてしまうのは申し訳ない。
(ささっと食べて薬を買いに行こう。たしか大通りの裏にドラッグストアがあったはず)
咳や鼻水といった風邪のような症状はないが、頭痛と熱っぽさがさらに強くなってきた。やはり疲れが出たのかも知れない。
四月から社外広報チームの主任に抜擢され、ずっと気を張っていた。会社の顔として失敗できないプレッシャーや後藤の嫌みに耐えていたところに火事にまで遭い、自覚はないけれどストレスがかかっていたのだろう。



