文乃の鋭い指摘に視線が泳ぐ。まさにそうしようとしていたなんて言い出せず、野々花は曖昧に笑った。
「本当に社長とはなんにもないんですか?」
「あるわけないでしょ。さっきも言ったけど、社長は自分に好意を抱かない女性シッターを探していたんだから」
自分で言いつつ、なぜか胸の奥がずっしりと重くなる。これも風邪の症状だろうか。
一方、野々花と一哉が恋愛関係にないと知り残念そうにしていた文乃は納得した様子で頷いた。
「たしかに野々花先輩、社長や副社長と話してても態度変わらないですもんね。私はあのおふたりのイケメンを目の前にしたら、仕事そっちのけでガン見しちゃいます」
「アホか、そっちのけにしないで仕事しろよ」
「拗ねないでください、健先輩もちゃんとイケメンだって思ってますよ?」
「拗ねてねぇよ」
相変わらず仲のいいふたりのやり取りを微笑ましく聞きつつも、頭痛はじわじわと酷くなっていく。
(頭痛薬、切らしちゃってるんだった。お昼ご飯食べたら買ってこなくちゃ)
解熱鎮痛薬を飲めば、頭痛も熱っぽさもなくなるはずだ。



