「体よく搾取されてません?」
「全然されてないよ。むしろ私のほうが助かってるくらいだし」
「でも住み込みって……」
「あっ。健先輩、いらやしい想像してるでしょ」
「バッ、馬鹿、そうじゃなくて――」
三柴は咄嗟に否定したけれど、傍から見たらそう勘ぐられる関係性なのだと実感し悲しくなる。
ベビーシッターとして一哉の部屋に住むと決めたのは、野々花自身だ。彼に頭を下げられ困惑したものの、断ろうと思えば断れた。
それなのに『搾取』や『自宅に連れ込む』というワードが出てくるのは、この生活がいかに世間の常識から外れているのかをまざまざと見せつけられているようで胸が痛む。
(社長と一社員が付き合ってもいないのに一緒に住んでたら、悪く言われるのは地位のある一哉さんの方なんだ……)
同居を提案された時には自分も非常識だと思っていたはずだ。けれど一哉と双子との生活は、いつしか野々花にとってかけがえのないものとなった。



