野々花は心配ないと微笑んで見せたが、一哉の表情は晴れない。
「何度も言うけど、一緒に車で出勤しないか? 周りの目が気になるなら、会社から少し離れたコンビニとかで降りるとか」
同居を始めた当初から、一哉は一緒に車で行けばいいと言ってくれている。しかし野々花はその申し出を固辞して毎日電車で通勤していた。
あくまでも野々花は双子のベビーシッターであって、一哉の恋人でも家族でもない。いくら一緒の職場だからといって図々しく助手席に座るわけにはいかない。
一哉のマンションから会社までの距離は電車で十五分ほど。以前住んでいたマンションよりも近いくらいだ。
今日も丁寧に断り、いつも通り電車に乗って出勤する。ぎゅうぎゅうの満員電車に揺られ、最寄り駅から会社までは徒歩三分ほど。道中にはネイバークリプトの社員も数人見受けられた。
不躾というほどではないけど、周囲から少なくない視線を感じる。今だけでなく、昨日からずっとそうだった。
(え、私、なにか変……?)



