その上、娘の亜沙美が乗り気そうなのも頭が痛い。こちらは全く興味がないというのに、なぜああも自信に満ちた目で一哉を見つめてくるのだろうか。
(あー、無性に宮部さんの声が聞きたい……)
亜沙美に名前を呼ばれたのがとにかく不快だった。早く彼女の声で上書きしてほしい。いまだに慣れないのか、一哉が帰宅すると『おかえりなさい、い、一哉さん』と照れたように微笑むのが可愛くてたまらない。
(これが『沼ってる』ってやつなのか)
相澤の言う通り、かなり重症らしい。一哉は野々花の声を思い出すだけで緩みそうになる頬を引き締め、思考を切り替えるために大きく息を吐いた。



