「娘も一緒で構わんだろう」
「彼女は御社の社員でも役員でもない部外者ですよね。契約更新についてのお話をさせていただきたいんです。後日、担当の者から書面にしてお送りさせていただきます」
本来ならば例の会食の際にその件について匂わせ、是正しないようならば契約の更新を取りやめると警告するつもりだった。しかしなぜか亜沙美が同席し、とても仕事の話をするような雰囲気ではなくなってしまったのだ。
「契約更新……? 今さら一体なんの話だ」
気色ばむ益田だが、一哉は怯まずに立ち上がった。
「申し訳ありませんが本当に時間がありませんので。今日のところはお引き取り願えますか」
有無を言わさず益田親子を追い出した一哉は、見送りを岡田に任せて再びソファに身を沈めた。
この地位にいれば、なにかと繋がりを持ちたいという思惑を抱えた人間と相対する機会は多々ある。慣れているとはいえ、益田のように娘を使って縁続きになろうとあからさまに画策されるのは不愉快極まりない。



