「あぁ、白河くん。連絡もなく悪いね。ちょうど近くを通ったものだから、一緒に食事でもどうかと思って寄ったんだよ。すぐ近くに美味い鰻を出す店があるんだ。なぁ、亜沙美」
「えぇ。きっと一哉さんにも気に入ってもらえると思います」
断られる想定はしていないのだろう。益田も亜沙美もアポなしで会社まで押しかけてきておきながら一切悪びれることなく笑顔を向けてくる。一哉は内心うんざりしながら「申し訳ありません」と小さく頭を下げた。
「せっかくのお誘いですが、これから外出の予定があるので遠慮させていただきます」
「なんだ、間が悪いな。予定をずらせないのか?」
ムッとした様子の益田に「金融庁の職員との意見交換会なんですよ」と不快感を隠して微笑むと、彼は渋々引き下がった。さすがにランチを理由に断れる会合ではないとわかったのだろう。
「仕方ない。日を改めるか」
「そうですね。近々、お時間をいただきたいと思っております。お話したいこともあるので」
そう告げた一哉に反応したのは亜沙美が先だった。



