本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


(俺と自分の娘が結婚したら、会社は安泰とでも思ってるのか)

益田証券会社は百年近い歴史を持つ独立系証券会社で、地域密着型の提案営業や資産運用にとどまらないソリューションサービスを展開している。

しかしネット証券の台頭や手数料の自由化、顧客の高齢化が進み、経営状況は厳しいと聞く。そのためか、最近では資産のある高齢者を対象に適合性の原則に違反した金融商品を売っているなどの黒い噂が絶えない。

そんな中、右肩上がりの業績を誇るネイバークリプトの社長と縁続きとなれば業界での地位も安泰で、なおかつ資金援助などの相談もしやすいと踏んでいるのだろう。もしかしたら、一哉の父が大手証券会社の副社長だということも知られているのかもしれない。

(そんな打算的な結婚なんて冗談じゃない)

嫌々ながら応接室へと向かうと、そこにいたのは益田親子のみだった。きっと岡田がうまく根本を連れ出してくれたのだろう。

「お待たせしました」

一哉が入室すると、益田親子は待ち侘びたと言わんばかりに身を乗り出してきた。