益田証券会社といえば、ネイバークリプトにとって恩のある取り引き相手だ。会社を立ち上げた当初、なかなか製品が思うように売れない中、いち早く勝機を見出し代理店営業を買って出てくれたのが益田社長だった。
まだ一哉や相澤が二十代前半の頃からの付き合いで、仕事面では世話になったけれど、正直なところ昔からあまり好印象の人物ではない。『金を生み出さない奴は無能だ』というのが彼の口癖で、優秀な男ではあるけれど全身から傲慢さが滲み出ていた。
「応接室にお通ししてくれ」
「よろしいのですか?」
「仕方ない。受付で騒がれるよりはマシだからな。午後からはちょうど外に出る予定だし、話を聞いてさっさと帰ってもらう。それから、もし益田社長の秘書がいたら彼に伝言を頼みたい」
益田の秘書を務めている根本は、一哉と相澤の大学時代のふたつ先輩にあたる。学生の頃から顔見知り程度で特段親しくしているわけではないけれど、例の会合の際にとある相談を持ちかけられたのだ。
「かしこまりました」
伝言を聞き終え出ていく岡田を見送り、一哉はため息をつく。



